陶棺


古代の陶器


古墳から出土した棺の素材は木や石が多く陶器で作れたものは珍しいです。また、陶棺の多くが岡山県吉井川流域、吉備と畿内を結ぶ古代の山陽道沿いで見つかっています。

岡山県古代吉備文化センターに赤磐市から出土した陶棺が展示されています。このような大きな焼き物を作ることは窯もなかった当時大変なことだったと思います。

野焼きではなかなか焼成温度を一定に保つことが難しいし、小さなものならともかく、陶棺のような大きなものはキズも出やすいです。陶棺を大きなまま焼成したのかどうかですが、研究によると分割して焼いたとも焼成後に分割したとも言われています。重いので運搬のことを考えてのことかもしれません。

足をつけているのは制作時と焼成時に起きる乾燥・収縮によるヒビや割れを防ぐためか、また火の流れがスムーズに走るようにするためか。陶器制作に関わっている者ならまず考えるところです。そういうことを古代の人々は理解した上で作っていたのでしょうか。
もしくは古墳の中に収めた後の湿度対策であったのか、想像の範疇を超えませんが興味深いところです。何にしろ古代の人々の高度な技術に感服するほかはありません。

しかし、この大きな陶器の棺が焼き上がって使われ現代の私たちも見ることができている事実は、まさに「論より証拠」です。

このような「素焼き」と日本では呼ばれているテラコッタは、粘土原型を制作後そのまま700〜1000度程度の低温焼成する方法で、その起原は旧石器時代に遡ります。「テラコッタ」はイタリア語の「terra cotta」で「焼いた(cotta)土(terra)」という意味です。人が火を使うようになり焼いた土が固くなることを発見した時から様々なものを作り生活に役立ててきました。

野焼きで焼かれた陶器は、表面に釉薬がかかっていないために炎が織りなす味わいがより強く感じられます。また出土したものは経年変化も手伝って現代の精製された均質な粘土、ガスや電気で焼かれた平均的な焼き色の陶器とは全く違う表情を見せてくれています。

埋蔵文化財は単に古い昔のもの。そうではなく、建築、農林水産業、運送、各種道具、陶芸、衣類、アクセサリー、食など様々な業種の立場から考えてみると、現代に至る実に面白い発見が沢山あると思います。










東京国立博物館所蔵の岡山県美作市から出土した陶棺もデザイン、大きさ共に素晴らしいものです。

陶棺

古墳時代・7世紀 岡山県美作市平福出土 東京国立博物館所蔵
棺身 高62.1 長172.7 幅48.5 cm : 棺蓋 高23.6 幅65.1 長90.9cm

陶棺(とうかん)とは、土でできた棺のことです。この陶棺は、比較的低温で焼き上げる赤褐色をした素焼きのもので、埴輪などの土成品と共通した作りです。家の形をしていて、蓋の部分は切妻型(きりつまがた)の屋根になっており、全体が12本の円柱型の脚で支えられています。大人が一人横たわれるくらいの大きさですので、形を崩さないように焼き上げるのは大変です。そこで、脚には空気を抜くための穴をあけ、蓋と棺をそれぞれ真ん中で二つに割り、パーツを分けることでうまく焼くための工夫をしたようです。




出典・引用  国立文化財機構所蔵品統合検索システム